男の美学Vol.4 医師 矢作直樹さん

五感を大切にしながら「ほどほど」に生きる

著書『おかげさまで生きる』がベストセラーに。救急医療の第一線で、命と向き合ってきた医師がたどりついた「人はなぜ生きるのか」という問いは、古来の日本人の世界観に添いながら、たくさんの人に励みを与えています。丁寧な話しぶりに、誠実で優しい人柄が伺えました。

医者は、治療の手伝いはできても、寿命を延ばすことはできません

人は、一度きりの命を生きるのではなく、魂は何度も転生して永遠に生き続ける。私はどこの宗教にも帰依していませんが、これを持論に医療と向き合っています。
プロの登山家を目指していた23歳のとき、2度、高山から墜落、滑落しました。特に1度目は1000m近く墜ちまして、死んでもおかしくなかったんですけど、何か大きな力によって守られ、生かされたことを実感しました。

その後、医者になって35年が経ち、生死の境目で、肉体と魂をつないでいる紐のようなものといったらいいのか、それがふっと離れる瞬間を何度も経験しています。医者は寿命を全うする手伝いをしますが、延ばすことはできない。延びるものは医者の手がなくても延びます。それが人智を超えた命というものだと思います。肉体は魂が操作する物質で、魂から離れたら、元いた「あの世」に還り、また肉体をまとって転生してくる。これが私の考える魂が生き続けるしくみです。

転生の理由は魂の学びです。人はどう生きたらよいのかを学ぶ。最近は「我欲」の強い生き方をしている人たちが多いように思います。そしてそれがかえって、学びを阻んでいるのではないでしょうか。

シンプルに暮らすと、身も心も明るく変化していく

昔の日本人は「ほどほど」、ということを知っていました。「足るを知る」という謙虚な気持ちが暮らしの中にあったんです。でも現代は、過度な欲があってキリがない。心身の不調を訴える人が多いのは、どこか無理をして本来の健やかなバランスが崩れているから。心と身体はつながっていることを忘れないようにしたいものです。

「ほどほど」とは究極の学びかもしれません。特に50代を過ぎたら心掛けていくとよいです。そのためには五感を取り戻すことでしょう。情報が溢れ返えっていますが、単なる情報とインテリジェンスは違います。惑わされず自分が感じること、必要なものだけを選択していく。シンプルに暮らすと意識するだけで、心身が変化します。気持ちがゆったりし明るくなるので、身体の抵抗力も増していくでしょう。そして何より感謝の気持ちです。朝、起きられたこと、ご飯が食べられること、空がきれいなこと……森羅万象に感謝して生きる。魂は永遠ではありますが、今の人生を愛を持って生き切る。その心の向きが大切です。

週末に、気分によって長い距離をランニングするという矢作さん。「走ると雑念がなくなって無になれます。でも長年やってきて身体が慣れているだけで、決して人にはお薦めできません(笑)」

Profile

矢作 直樹(やはぎ なおき)

1956年、神奈川県生まれ。81年、金沢大学医学部卒業。83年、国立循環器病センターの外科系集中治療科医師、医長を経て、2001年より東京大学医学部附属病院救急部・集中治療部部長となる。主な著書に『人は死なない』(バジリコ)、『天皇』(扶桑社)。近著『見守られて生きる』(幻冬舎)が好評発売中。

見守られて生きる

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